クレール日記

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浴室設計⑤ 要介護度の想定と設計

浴室設計④では、各社から発売されている施設向けの個浴槽についてお話をしました。
その選択には大変悩みました。浴槽の選択は施設のケアの在り方を大きく左右するといっても過言ではありません。


【ユニットケアの理念と要介護度】

先ず考えないといけないことは、生活される方の要介護度をどう考えるかです。
行政の定める特養入所指針に基づくと、要介護度4~5の方が優先的に入所ということになります。そうなると、個浴ではなく特殊機械浴槽が最も適するのかもしれません。

ユニットケアの理念は『一人一人の生活習慣や好みを尊重し今までの暮らしの継続が継続できるようサポートすること』とされています。
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逆に言えば、これまでの生活習慣や好みなどしっかりと持たれており、これまで何とか自立してきた居宅での暮らしを、仮に施設に入居(住み替え)したとしても変わることなく継続して過ごしたいというニーズに応えるという事だと思います。

この様なニーズをお持ちのお年寄りの方を想像してみてください。
頭の中に浮かんでくるのは、どちらかと言えば比較的軽度の方ではないでしょうか?

実際に新宮市で施設入所を申し込まれている方は、要介護度4~5以外の方のほうが圧倒的に多いのです。現在の入所指針ではこれらの方々には入所の機会が極めて少ないと言えます。
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そこで黒潮園の中期事業計画に『地域を支える福祉システムの構築』を掲げ、今後なお一層問題となってくる老夫婦世帯や独居高齢者世帯の増加に対して、個室でプライバシーが保たれ個々の生活が継続できるユニットケア施設『クレール高森』を計画したのです。

すべてのニーズを満たす施設ケアというのは大変無理があります。浴室設計においても、重度介護者まで想定すると、確かに「備えあれば患いなし」というように特殊機械浴槽があれば問題ないでしょう。しかし、居宅で個浴槽での入浴を楽しまれてきた方にとっては、本当に望まれる生活と言えるでしょうか?とても違和感を感じられることでしょう。



【浴槽の選択】

私はユニットケアの理念から、基本的にはユニットケア施設が重度な要介護者のニーズに対応するもとは思っていません。

そこでクレール高森では中等度(要介護度3)の要介護者のADL(日常生活動作)、身体能力を想定した設計をしています。私たちの強みは既存の従来型特養黒潮園が隣接していることです。それぞれの施設体制の強みをもって相互支援ができ、完全な寝たきりの状態となられても特殊機械浴槽の設置された黒潮園でケアを行うことができるのです。


ユニットケアでの入浴は基本、お一人づつ、一人のスタッフが介助するマンツーマンケアとなります。ですからご利用者さまの負担だけではなく、介護職員も安全に介助できるかがポイントとなってきます。
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そういった点から前回紹介した酒井医療のパンジー、OG技研のボランテともに要介護度3前後の車いす移動が中心となる高齢者には大変使いやすい浴槽です。

浴槽をまたぐ動作を不要とすることで、車いすとベッドの移乗介助と同じような介助で、浴槽に移乗するだけで湯船につかることが出来ます。これは特別な介護技術を必要としないため、経験の少ない介護職員でも安心して、マンツーマン介助が出来るでしょう。またこの機能は浴室の床を掘り下げる必要がなく施工も容易とします。



ここでもう一つ、クレール高森の設計で大切にしている点は「暮らしの継続」です。これまでのクレール日記につづってきましたが、「施設」ではなく「住まい」という視点からの設計です。
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酒井医療のパンジーは「入浴装置らしくない普通のお風呂をつくろう」と当時、前代未聞のテーマにその実現に向け検討を重ね開発されたものです。

しかし、この画期的なパンジーもボランテも、クレール高森の「住まいの設計」という設えの中では、どうして入浴装置らしく見えてしまいます。そこだけが唯一の難点でした。

職員からは「出来るだけ家庭的なお風呂に入っていただきたい」という声が多くあります。東京の施設でユニットケアに携わった経験のある職員(度々登場する東介護職員)も「特殊な浴槽でなくても個浴への入浴介助はできる」という意見でした。
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そこで最終的には、より家庭的なお風呂に近いデザインでありながら、様々な介護への工夫がされたメトスの個粋を選択を決断しました。
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個粋はボックスに介助用リフトが収納されています。一見するとその存在が気づかないデザインが魅力的です。また浴槽とリフト収納ボックスは別々の構造となっているため、浴槽だけを設置しておいて、将来必要となれば簡単な工事でリフトを追加設置することが出来ます。このように入居者の状況に合わせた幅広い将来対応が可能となります。

実際に2回ほど、施設に実物を持ってきてもらい使い勝手の検証もしました。
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【重度化対応への工夫】
ほとんどのケースでスタッフの介護技術で個浴槽への入浴介助ができると言われていますが、やはり万全とは言えません。そこで4つのユニットのうち、個粋シリーズのリフト付き浴槽を1つのユニットに設置し、他3ユニットを個浴槽のみの設置としました。

個浴槽のみの3ユニットともに、排水や床の構造は将来的にリフトを追加設置できるよう設計しています。

この浴室設計の最大の特徴は、完成時にリフト付き浴槽を設置する南棟浴室の設計です。
他のユニットの入居者さまが、どうしても個浴槽での入浴が難しいという場合に、この南棟1階リフト付き浴槽を活用できるよう工夫したのです。
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エレベーターに近いところに浴室を設け、ユニット玄関ではなく壁面を開閉可能な構造とした裏導線から浴室に入ることが出来るよう設計しました。

また、他のユニットの浴室より広く設計されています。これは車いすではなくストレッチャーでの入浴介助に必要な寸法を計算しているのです。また数十年後の状況など極度の重度化も想定し、最終的にこのリフト付き浴槽を撤去し、特殊寝台浴槽を設置できるかも計算して設計います。


今回は個浴槽の選択についてお話しました。このように浴室の設計は入居者さまの介護度や望まれる生活スタイル、そして介護方法や職員の作業性などあらゆる面から焦点をしぼっていく必要があり大変悩ましいものです。次回、浴室設計⑥では具体的なレイアウトや寸法の検証についてお話をしたいと思います。 
by kuroshioen | 2014-01-18 22:50 | Comments(0)

トップライトorハイサイドライト

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昨日、工程報告のなかで南棟の特徴的な屋根の形状と、エアコン設備と採光窓についてお話をしました。

そこでこの採光窓はトップライトなのかハイサイドライトなのか‥ 
何気ない疑問が浮かんだので少し紹介したいと思います。



どちらも高い位置に設けた採光、または通風のための窓のことを言います。

「南棟の窓はトップライト?ハイサイドライト?どっちなんでしょうか?」

鈴木設計士「一般的に屋根面に水平に近い形で設けられるのがトップライトで、壁の上部に垂直に設けられるのがハイサイドライトといいますけど‥」

現場監督さん「私は用語は苦手です‥(笑)。」

鈴木設計士「クレール高森の場合は屋根の一部に取り付けられてますが垂直方向だから‥ トップライトではなくハイサイドライトでしょうか。」

居住空間に差す自然の光によるコントラストは気持ちを安らげますよね。
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クレール高森は海の青と森の緑に囲まれた素晴らしいロケーションを取り込むことに加え、自然の日差しによる暖かい空間づくりにこだわっています。
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紀南地方は海を照らす日差しが四季折々の風景を作り出します。
また冬でも日当たりのいいところは暖く感じられるほど、太陽の恩恵を肌で感じることができます。
一方で、台風がやってくると、その様子は一転し、想像以上の海から吹き上げてくる猛烈な風と雨にさらされます。

このようなデザインと景色の取り込みに工夫した大きなサッシやハイサイドライトを設計するにあたり、風雨対策など、この紀南地方特有の気象条件に十分に配慮することを念押ししていることは言うまでもありません。

建築はデザイン、居住性・使いやすさ、そして機能性を高い次元で満たすことが重要です。




床から天井まで切り取られた開口の大きな居室窓
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車椅子のフットレストの高さにより設計されたキックガード
by kuroshioen | 2014-01-15 14:49 | Comments(0)

浴室設計④ 介護個浴槽

【従来型特養の個浴】

従来の特養では寝台型や車椅子対応型の特殊機械浴槽が多用されてきました。この特殊機械に流れ作業的に行われる入浴は、これまでの生活での普通のお風呂とはかけ離れています。

近年、従来型の特養においてリフォームを行い、個浴槽を採用するケースが増えていることもお話をしました。檜風呂を用いるなど、より家庭的な雰囲気に配慮され、ご利用者さまにも評価が高いようです。
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しかし、一定時間内に大人数の入浴を必要とする従来型ケアでは、一つの浴室に複数の浴槽を並べることが必要となります。 みんなで数個の浴槽に分かれて入る個浴‥ 何となく違和感があります。

大人数での入浴ということであれば、いっそのこと温泉のような設えのお風呂の方がいいのでは‥ と思います。
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こんなお風呂がバリアフリーで設計された施設なら魅力的ですね。
(これまでの多くの施設の一般浴槽はどこかプールのような‥ 施設特有の設計が多いですよね)


本当にゆっくりと心を休めることのできる理想の入浴は、一浴室一浴槽のマンツーマンケアではないでしょうか? ハード面とソフト面の両側面から個浴の有用性を十分に発揮できるのはユニットケアだと言えます。




【重度化対応と個浴】

より家庭的な入浴という点から選択肢の1つとして、浴室設計③では介護に特化したユニットバスについてお話をしました。これらの商品は現在、急増中のサービス付き高齢者住宅(サ高住)やグループホームでの採用が多いのではないでしょうか?

サ高住やグループホームでは、アパートや家屋のような比較的お元気な方の暮らしを想定した建物が建てられます。これらの施設で問題となってくるのは入居者の重度化です。

開設当初は比較的お元気なお年寄りも、5年、10年と入居生活の経過とともに体が不自由となり、介護負担が大きくなってきます。このように要介護度が重くなると、職員配置などケア体制の問題から対応が難しくなり、施設の退所を迫られるケースも多くあります。この問題は介護スタッフにとっても、ご本人ご家族にとっても非常に大きなものです。

現場職員の声では、具体的な介護負担の一つに入浴介助があげられます。手すりなどを設置しても、一般的な浴槽ではどうしても無理が出てくるのです。




【介護個浴槽】

そこで、この一般的な浴槽と、特殊機械浴槽の中間的な位置づけの介護個浴槽が開発されました。
メトスの「個粋」、酒井医療の「パンジー」、OG技研の「ボランテ」といった製品です。
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「個粋」はメトス㈱と大阪市立大学との共同研究「個別対応型入浴システムの提案」に基づき開発されたもので、浴槽と一体的にデザインされた収納式のリフトを備えており、歩行が自立している人から、車椅子移動の人までが利用できるユニバーサルデザインが特徴です。




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「パンジー」は入浴装置らしくない介護用の浴槽を目指し開発されたものです。入浴動作の中で最もバリアーとなる浴槽をまたぐ行為を、浴槽の壁面が下降する機能(開閉式昇降エプロン)を採用することで、車椅子の方も安全に安心して移乗できる画期的なアイデアで注目されました。




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「ボランテ」は前述の2つの製品に遅れて発売されたものです。浴槽壁が上下する構造はパンジーと同様ですが、貯湯タンクを備え毎回お湯を入れ替えることを可能とし差別化を図っています。お湯を循環させる機能がついており、ろ過・殺菌行い新湯を30ℓ追加するだけで次の入浴ができることを特徴とし、これにより光熱水費を80%カットでき経済的としています。



他、アマノから「アビット」という同様の製品が発売されています。
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これらの製品が開発されたことは、機械的な浴槽での入浴が当たり前であった施設での入浴のあり方を大きく変えることになりました。歩行が困難であっても、これまで家庭で使ってきたお風呂と同じように入浴ができる素晴らしいものだと言えます。

特にご本人の身体能力を最大限に生かした「自立支援のケア」という視点から、中等度要介護者の身体機能に最も適した浴槽ではないかと思います。


さてクレール高森では、これらの介護個浴槽のなかでどれを採用したかと言いますと‥

メトス社の「個粋」を採用しました。
その詳細は次回、浴室設計⑤でお話をしたいと思います。
by kuroshioen | 2014-01-12 15:42 | Comments(0)

夫婦部屋と間仕切り壁

南棟では内部仕上げの作業が進められています。

居室の間仕切り壁の下地工事の様子です。
現場ではまだ軸組の状況ですが、1つ1つの居室の区画が分かるようになってきました。
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この間仕切り壁はLGS壁と言われるのもです。
LGSとはLight gauge steel=軽量鉄骨の略です。
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表面が亜鉛メッキ処理されており、光沢のある銀色をしているLGS(軽量鉄骨)
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LGS(軽量鉄骨)は天井、壁の元となる材料で、単体では1本の棒状の部材です。種類がいくつかあり、ビスや溶接で留めて、いろいろな複雑な形を作り上げていきます。

この軸組されたLGSの上に石膏ボードを張り、さらに壁紙(クロス)を張って仕上げて行きます。身近にはマンションの部屋を区画する壁の構造と言うと解り易いですかね。
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設計の段階では、ご夫婦で入所された場合のお部屋についても検討しました。

果たして必要か?必要であれば、ホテルのコネクションルームのように2つの部屋を行き来できるように間仕切り壁にドアを付けるか?壁を取り外し可能な構造とするか‥などです。

色々と思案した結果、必要となれば対応できるよう下地に工夫することにしました。
クレール高森では各ユニットで1箇所ずつ、居室隣り合わせの壁の一部を簡単な工事で取り外すことができる構造としています。 そこでLGSの施工方法をその部位だけ、開口補強部材を入れる専用の設計としました。

(完成時はどの壁も同じ仕上げとなり、外から見た目には分からないようになります)
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by kuroshioen | 2013-12-26 11:13 | Comments(0)

浴室設計③ 介護用ユニットバス

浴室設計①『施設の入浴と個浴』では、クレール高森ではユニットごとに浴室を設計しており、これまでの施設での入浴とはちがい、入浴時間にゆとりを持ったマンツーマン入浴によるケアが可能となるというお話をしました。

ではこの場合、施設に設置する浴槽はどのようなものが適するのでしょうか?

ユニットケアでは、家庭の暮らしが継続できるよう支援することを目的としています。一般的な住宅で多用されている浴槽はユニットバスのタイプが多いのではないでしょうか? しかし、これでは要介護の高齢者にとって十分とは言えません。




実はユニットバスのメーカである積水ホームテクノとナショナルから、介護のしやすさに考慮された介護用のユニットバスが開発・販売されています。

3方向介助が可能なタイプから、介助の方向に合わせて浴槽自体の位置をずらし可変させることができるものまで様々です。高齢者の入浴を想定した手すりの位置や浴槽の深さなど人間工学的な視点から様々な工夫がされています。
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ユニットバスはコンパクトなスペースに効率よく設置出来る上、コストも福祉機器の介護浴槽より安価であり、今、流行りの高齢者住宅などでは建築コストを抑えることができるため採用されるケースが多くなっています。




近年の介護現場において、施設特有の介護を見直そうと、大衆浴場のような一般浴を改修し個浴槽を設置する施設や、特殊機械浴槽を廃止しようという考えも広がりを見せています。
そこで、3方向介助ができる浴槽を用いれば、適切な介護技術を身に付けることにより、要介護度4、5といった重度の方であっても、ほとんど個浴槽で入浴させることができると言われています。
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ユニットケアでは、職員配置などの関係から、基本的にマンツーマンで入浴を介助します。そこで新人スタッフからベテランまでそれぞれが、様々な身体能力のご入所者を安全で快適に入浴介助を行える浴室環境が重要です。そしてケアする側も腰など身体に負担なく入浴業務ができることが重要です。

この介護用ユニットバスの特養での採用は、下肢の関節が硬くなった方や、著しく下肢筋力が低下した方を一人で入浴介助するケースを考えると不安があることも事実です。また設計の視点からは、景色の見える大きな窓や、採光を考慮した窓を設けるといった自由度が制限されてしまいます。

介護用ユニットバスはコスト的にも機能的にも魅力はありますが、特養における入所者の要介護度やユニットケアのコンセプト、実際の業務など様々な視点から検証した結果、クレール高森では採用しませんでした。


そこで次回、浴室設計④では、福祉機器の中から介護個浴槽の種類を紹介し、クレール高森における設計の工夫についてお話をしたいと思います。
by kuroshioen | 2013-12-23 20:46 | Comments(1)

浴室設計② 浴室の採光

皆さんの自宅のお風呂、または施設のお風呂には窓がありますか?

お風呂からどのような景色が眺められますか?

一般的に住宅の設計では、リビングや寝室など一日でも過ごす時間の長い場所から優先的に日あたりや景色の眺めを考慮し設計されます。浴室などの水回りや収納はどうしても優先順が後になりがちとなり、結果的に日当たりは犠牲になってしまうことが多くあります。

またプライバシーへの配慮から小さな窓が設けられることが多い様に思います。



私たちは、お風呂の時間というのは体を清潔にするだけでなく、疲れを癒したり、のんびりとした時間を過ごすなど‥ ご本人がくつろげることが何より大切だと考えます。

一般的に夜にお風呂に入ることが多い私たちの生活ですが、施設では基本的には昼間の入浴となります。
そこでクレール高森は、どの浴室にも大きな窓を設計し、採光に特にこだわり設計を進めました。

そしてその窓からは景色が眺められ、太陽の光がさし込むことを考慮し浴室の位置や方向を設計しています。
外の景色が眺められないユニットでは、坪庭やバスコートを設けて、窓の外にくつろぎを感じる空間づくりをデザインしています。
また日差しと同時に風通し得られ、浴室の衛生面においても大きなメリットとなります。

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暖かな日光が注ぎ、心地よい風が通り抜ける浴室で

窓の外の景色を眺めながらゆったりと入るお風呂‥


いいですよね~。
それだけでも施設の暮らしが豊かになると思いませんか?


遠くに海を望む南棟2階ユニット浴室
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木製ルーバーに囲まれたバスコートに面す北棟2階ユニット浴室
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デッキに観葉植物などを置くと、落ち着きのある空間となるでしょう



次回、浴室設計③では個浴槽の選択肢として、近年施設向けに様々な商品が開発されているユニットバスについてお話をしたいと思います。
by kuroshioen | 2013-12-20 11:56 | Comments(0)

建築資材不足

今日は冷たい雨が降る一日でした。

非常に風も強く、天候が荒れましたが、工事は休むことなく進められています。
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この冬の冷たい雨の中、作業を頑張ってくれている職人さんに感謝申し上げます。





さて、いよいよ年度末が近づくにつれ、どこの工事現場も作業は大詰めを迎えます。

そこで、この時期問題となってくるのは建築資材不足です。 災害復興や公共工事、また消費税増税前の駆け込み需要などにより、全国的に資材不足が危惧されています。

既に電気設備関係の資材や、建物の断熱材が欠品の状態にあり、納入不可という状況にあります。

この電気設備関係の資材は、下請けの勝山電気さんが、これを見越して前もって設計図から必要数量等を拾い、既に確保してくれているという事です。(的確な段取りありがたいです)



運ばれてきた断熱材の荷下ろしをするトラック
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このように現場の工事の進行具合だけでなく、建築資材や仕上げ材、サッシやキッチンなどの備品の発注と納期が工期に大きく影響してきます。ですから建物内のすべての箇所の床から壁、照明までその色や種類の最終決定を急ぐ必要があります。


だからといってこの大詰めの段階で手を抜く訳にはいきません。
ここで適当となってしまうと、せっかくのいい建物も台無しになってしまいます。

特に床材、壁紙、浴室タイル‥ インテイリアに関わる仕様や色はその空間を大きく左右します。ですから私たちはカタログからの選択だけではなく、必ず実物のサンプルを取り寄せ検証しています。
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この膨大な多岐にわたる情報量の処理には想像以上に労力と持久力を要します。
益田、鈴木両設計士はクレール高森のコンセプトを大変理解して頂いており、仕様の変更、決定の際には施主である私たちの確認を必ずとった上で進められます。

と言うより、もう私たちも益田設計事務所の一員?といった感じで内容の深い検証を重ねています。


ちなみに、以前から検討してきた外壁塗装の色も、昨日ようやく最終決定されしました。
前回は小さなカラーサンプルから絞込みを行いましたが、より大きなカラーサンプルの作成を依頼し最終検討を行いました。 色とは不思議なものでサンプルの大きさでその印象が変わるものです。(写真ではそれぞれの違いが分かりにくいでしょうか?)

さすがにこれ以上は大きいサンプルでの確認は実際に塗るしかありませんね。
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一つ一つのプロセスがとても大切となります。

そして、その結晶として完成する建物は間違いなく素晴らしいものとなるでしょう。
by kuroshioen | 2013-12-18 11:24 | Comments(0)

自動車純正色?

以前に、クレール高森は「施設というよりも、住まいとしての空間づくり」にこだわりたいというお話をしました。例として屋内消火栓の設えをあげ、その考えを述べさせて頂きました。

設計図面で屋内消火栓は北棟ショートユニットでは下駄箱、壁面収納の木製家具の中にレアウトされています。その他のユニットでは壁面に埋込む設計となっています。
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㈱ユニオン社製 消火栓ボックス
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施工例:兵庫医療大学


仕上げの打ち合わせの中で、この屋内消火栓のカラーリングの決定が必要となり、
鈴木設計士と議論しました。


設計士さん「この消火栓ボックスはシャープなデザインでかっこいいものなので、これをインテリアとして活かすためにも、オーダーで焼付塗装をしたい。」

私「いやいや、出来るだけ違和感なく、住まいとしての空間に馴染むよう、壁紙など周囲の仕上げ材と同じもので仕上げたい。」 「すくなくとも当初のコンセプト通り、家具の部分の家具調仕上げは外せないですよ」


そこで、出てきたのは自動車塗装のカラー見本です。

トヨタ、日産、ベンツからポルシェまで‥ 国内外の自動車メーカーの純正色が‥ 
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車好きの私としては興味がひかれます。


設計士さん「この中から、私はこの色(ガンメタ)がカッコイイと思いますが‥」

私「ならば、もう少し明るくお洒落なシャンパンゴールドのほうが軽い感じでいいのでは?」
(ちなみにサッシ枠の色も同じシャンパンゴールドです)

設計士さん「なるほど、この色はお洒落で高級感があっていい!」




という風に‥

色々と議論した結果

木製家具に収めた消火栓は同じ木調の仕上げ材で家具と一体的にデザインすることとし、壁面の消火栓にはフォルクスワーゲン純正色チタンベージュメタリックの焼付塗装を採用することになりました。
(一層のこと、あこがれのメーカーの純正色を選ぶのもありだったかも‥ )
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クレール高森の屋内消火栓をご覧になられたときは‥

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フォルクスワーゲンかぁ‥ って気付いてくださいね。
by kuroshioen | 2013-12-16 14:02 | Comments(0)

浴室設計① 施設の入浴と個浴

施設ではどうしても、自宅の暮らしとはかけ離れていることが多々あります。

その一つに入浴場面があります。一度に大勢の方を入浴介助するためには、複数の職員が配置され、大衆浴場のような浴室でそれぞれ脱衣、洗身、着衣と業務を分担し、流れ作業的に進められえます。

黒潮園では「施設だから仕方ない」ではなく、ご利用者本位の『ゆとりある介護を目指そう』ということで、介護職員を大幅に増員し業務の見直しに取り組んできました。そこでお一人お一人に合わせた『個別のケア』と『自立支援のケア』に取り組み多くの成果が見られています。

しかし、この入浴に関してはほとんど成果が出ませんでした。
その理由と施設ケアの課題についてお話をしたいと思います。

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【従来型施設の入浴】

皆さん、施設の暮らしではお風呂に週何回入れると思いますか?

施設における入浴回数については、省令である指定介護老人福祉施設(特養)の人員、設備及び運営に関する基準にて、従来型特養では『週2回以上の入浴または清拭』と定められています。

これは少ないと思いませんか?

現在、黒潮園では100名のご入所者が暮らされています。
100人の方を1度に入浴することは不可能であり、1日に約30数名の方の入浴介助を行います。すると入所者全員がお風呂に入るのに3日かかる計算となります。このことから省令で定められている入浴回数は、1人につき週2回となることがわかりますよね。

ですから既存型施設での入浴は、週2回というのが一般的となるのです。



では次に、お一人の入浴時間について考えてみましょう。

黒潮園の業務では入浴時間は以下のようになります。
AM9:30~11:00   90分
PM13:30~15:30 120分    1日の入浴時間計210分
210分÷30人=7分/人

お一人あたりの入浴時間は約7分という計算になります。

これが従来型施設ケアの現状なのです。想像して頂ければわかると思いますが、この限られた時間で円滑に安全に入浴をして頂こうと考えるとどうしても作業分担的とならざるを得ません。ですから、何とかしたいと思っても既存のケアでは、ゆったりとお風呂に入って頂くということは難しいのです。




【ユニットケアにおける個浴】

これまでも新しく取り組むユニットケアについて紹介してきましたが、クレール高森では小さなケア単位(1ユニット10名)で暮らしを支援します。

この入浴を考えるとよく解ります。


まだ業務内容は決定していませんが、仮に先ほどの計算と同じ1日210分の入浴時間を設けたとすると、1人の入浴時間は約20分となり、ゆっくりと入浴して頂くことができるようになります。

これはとても大きな意味を持ちます。

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設計では各ユニットに浴室を設けています。それぞれ4箇所のお風呂があります。
そして家庭のお風呂のように個浴槽を設置します。

入浴の流れも全く異なります。 一人の介護職員がお部屋からお風呂に案内させて
頂き、脱衣から入浴までマンツーマンで介助することとなります。

このように個別対応が可能となるため、ご希望があれば女性には女性職員が支援する同性介護にも対応したいと考えています。また職員から「夕方のお風呂もできれば」という声も上がっています。

このようにユニットケアでは、これまでの施設ケアのあり方を大きく変えることができます(その可能性があります)。 週2回だとしても『ゆっくりとお風呂に入ることのできる暮らし』っていいですよね。




【個浴の課題】

ユニットケアにおける入浴についてお話をしました。
そこでどのような入浴の様子を思い浮かべますか?

そのシーンは、お年寄りの方がスタッフの力添えで湯船に入り、スタッフと会話をしながら笑顔でお湯につかっている様子ではないでしょうか?

現在、行政は要介護4・5の方の優先的な入所を進めていますが、寝たきりで重度な方の施設入所のニーズを考えると、個室ユニットケアに若干の疑問が生まれてきます。入浴においても、重度要介護者をマンツーマンで家庭のお風呂のような個浴槽に入浴を介助することは、安全面からも高い介護技術を要します。

既存の特養ではその方に必要とする介護レベルに合わせて、寝たまま入浴できる臥位式機械浴槽を使用します。これにより、重度要介護者が安全にゆったりとお湯に浸かることができるのです。医学的な管理の必要性も高く、病院の様と言われる既存の多床室ケアが適する場面もあるように思います。
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個浴が最も素晴らしい入浴方法とは思っていません。大切なことはその人その人に合わせたケアだと思います。どのようなニーズを想定しているのか、目指すケアのあり方、その施設の役割・機能を明確にし、それに合った設計をする事が重要です。

クレール高森は、ADL(日常生活動作)の自立と暮らしの継続をニーズとした方のレベルを想定した設計を行っています。 (介護度3~4といった感じでしょうか?)



今回の浴室の設計で最も考察したのは、ご入所者の身体レベル(要介護度)と適する浴槽の選択です。

家庭と同じような浴槽がいいか?
リフト付き浴槽がいいのか?
将来の重度化に備えて機械浴槽が必要か?

入浴のあり方をどのように考え設計を進めたのか、詳細を浴室設計②で述べたいと思います。

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by kuroshioen | 2013-12-12 08:35 | Comments(1)

照明計画⑤ 排泄ケアと間接照明?

照明計画のお話も、第5話まできてしまいました。

計画段階から、先日の第13回定例会議まで私たちの間でずっと話題となっていた‥ 
間接照明について紹介したいと思います。



直接照明と間接照明

照明の手法には直接照明と間接照明があります。

直接照明は発光元(蛍光灯や電球など)が直接対象物を照らす方式の照明のことです。部屋の明るさを確保する照明は一般的に直接照明となります。
一方で、間接照明はその反対に光を壁や天井などに光を当て間接的に空間を照らす手法です。反射光を利用することによって柔らかい光となり、空間に奥行や広がり感のあるお洒落な空間を創ることができます。
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お洒落なホテルや飲食店などではインテリアやムード照明として採用されていることが多く、最近では住宅でも寝室や和室などに、落ち着きと癒しをもたらす工夫として採用されているケースも多く見られます。
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クレール高森では間接照明を居室入口上部に仕掛けており、壁面から天井に向かって柔らかな光が照らされます。個人的には間接照明の雰囲気は大好きですが、施設にお洒落感‥? 色々と悩み議論しました。 これは設計士の鈴木さんの提案で、是非やりたいということから採用されました。






個室トイレの課題

さて今日のテーマにある『トイレと間接照明』ですが、話の流れからは連想し難いですよね。

実は各居室にトイレを採用するにあたり、どうしても採用したい照明計画がありました。
それはランプの点灯など何らかの方法で、ご利用者さまがトイレに入られたことを私たちが気づくことが出来る仕組みを作ることです。


私たち黒潮園では、専門性のあるケアの取り組みとして、できる限りおむつを外し、排泄自立を支援するケアに取り組んでいます。
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そこで決まった時間に一斉におむつ交換を行う作業的な一律ケアではなく、お一人お一人の排泄の間隔や時間帯のデーターを取り、個々の排泄リズムに合わせた個別の排泄ケアに取り組んでいます。

このような質の高い排泄ケアを行うためには、お一人お一人の排泄状況を把握することが必須となります。

居室内にトイレがあることは、プライバシーへの配慮や、生活空間にトイレが隣接することで自力でトイレに行ける環境となります。しかし、居室の扉で中が見えないことにより、いつおトイレに行かれたかということが把握できないというデメリットもあるのです。






排泄ケアと照明計画

居室トイレの照明計画では、スイッチは人感センサー式を採用し、扉を開けると照明が自動で点灯する仕組みとなっています。そこで、このセンサーを活用し、もう1系統、同時に居室外のランプを点灯させる案を提案していました。

そうすると、私たちはこのランプを頼りに、ご利用者がトイレに入られたことを把握することができるようになります。また必要であればお部屋をノックし、さりげなくおトイレの介助をさせて頂くこともできます。


では、どこにそのランプをどのように設えるのか?

居室入口脇の家具調の台の下に見えないようにライトを仕掛けるか。
門扉等として設えるブラケットを改造して電球を埋め込むか。

目立つようでは不自然ですし‥
見えなければ意味がない。


色々と思案した結果。デザインとして提案された間接照明を利用し、その光をトイレのサインとしても活用するアイデアでまとまりました。




デザイン優先の間接照明が施設の設えとして必要か?という悩みが、このようにケアに関連する機能をもたらすアイデアにより、皆が納得いく案として決定に至りました。 というお話でした。

鈴木設計士もホッとしたようです。
by kuroshioen | 2013-12-06 12:35 | Comments(2)