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クレール日記

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身体拘束してませんか?

こんんちは。


9月5日 

施設内セミナー『身体拘束廃止・高齢者虐待防止セミナー』を実施しました。








医療・介護に従事されている方。ご利用者さまや患者さまの行動を制限する『身体拘束』を行っていませんか?



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当然、今の時代に身体拘束をしているような施設はもう無いでしょう!!

という風に感じた方も多くおられると思います。





勿論、私たち黒潮園、クレール高森ともに、身体拘束ゼロです。

これくらいは… と現場で言われている、ベッドからの転落防止の全面柵も、車椅子からの立ち上がりを防ぐためのオーバーテーブルによる拘束や行動の制限もしていません。





残念ながら、介護保険制度が始まった頃、もしくはそれ以前の特養では身体拘束が当たり前のようにされていたことは事実です。

そこで、介護保険制度では身体拘束廃止規定が設けられました。





また2001年に国では「身体拘束ゼロ推進会議」が立ち上げられ、「身体拘束ゼロへの手引き」がまとめられました。介護保険制度において事業者の責任としても明記され、

2006年には介護報酬においても、「身体拘束未実施減算」といって、施設で身体拘束を行う場合の家族の同意や記録をちゃんと行っていない場合に報酬を減らすことが示されました。




それから、10年数年経った今。

このように社会的は認識が大きく変わったことで、身体拘束は減ったのでしょうか?







この平成30年度の介護報酬改定で身体拘束廃止未実施減算に関する要件の変更がありました。

身体拘束が減ったので要件が緩和されたのかというと、逆でより厳しい要件に改定されました。



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報酬が下げらえるからということではないですが、事業者は①~④の要件を満たさない場合は減算されることに注意が必要です。

特に施設内セミナーは年2回必要になっていることに留意しなければなりません。

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これは何を意味するのかと言うと、身体拘束が減ったどころか増えている?ということです。

今に至ってと思いますが… だから、国は報酬改定において要件をさらに厳しくしたと言えます。






2016年に公益社団法人全日本病院協会が、全国の病院・介護施設等に実施したアンケート調査では、65.9%の病院や施設で身体拘束ゼロが達成できていないという結果となっています。

また、身体拘束の内容に関する別の調査報告書でもその実態が示されています。

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これはあくまでもアンケートで「身体拘束をしている」と答えられた数ですので、現実はもっと多くの拘束があると言えます。






私は近年、ケアの質が高くて素晴らしい施設が増えていると思います。しかし、それは一部であって一方では悲惨な施設も多くあるのが現状です。いい職場、いいケアをしている施設のを判断するバロメーターの一つにとして、身体拘束を実施している施設かどうか?ということで判断できると考えます。

身体拘束を当たり前にようにしている施設では、職員の利用者に対する尊厳への配慮や人権意識が欠落していきます。その組織風土が不適切ケアへとつながり、または虐待につながることも否めません。




悲しいことに、つい最近も引っ越しにより当施設を退職し都市の特養に就職したスタッフが帰省した際に、勤め先の施設では常に身体拘束をしており、不適切ケアが蔓延している悲惨な現状を耳にしました。

このような特養が存在していることで、特養の社会的なイメージが大きく損われます。介護人材不足とといますが、特養がこのようなイメージでは働き手が来ないのは当然と言えます。ひとくくりに特養がそんな所と思われることは非常に残念なことです。




さて、セミナですが・・・ 身体拘束に関する知識を座って聞くだけではどうかなと思い・・て

グループワークを中心にし、また配布資料も空欄を設け記入をしながら講義を受けるよう工夫しています。




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検討内容

・そもそもなぜ身体拘束をしてはいけないの?

・身体拘束をすることによる弊害にはどんなものがあるのか?

・身体拘束に該当する行為にどんなものがあるのか?





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問.そもそもなぜ身体拘束をしてはいけないの?

・自分がされて嫌なことだから
・その人の人権を無視しているから
・尊厳を守っていないから

などなど、多くの意見が出されました。

また「黒潮園の理念に反しているから!」という意見もでましたねぇ~。 これってとても大切なことです!!


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ここで、介護保険事業に従事する職員には、法令上の禁止規定を守る責任があることをしっかり認識しなければいけません。 





問.身体拘束をすることによる弊害にはどんなものがあるのか?
・認知症が悪化する
・人を信用できなくなる
・生きる気力、やる気が損なわれていく
・身体的、精神的な弊害を起こしてしまう

などなどの意見がでました。


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介護福祉士やケアマネージャーの資格試験の勉強をする際に、⑴身体的弊害 ⑵精神的弊害 ⑶社会的弊害 について学ぶと思います。 グループワークでもそのキーワードがきちんと出されていました。

特に拘束されたことによる、ご入居者の気持ちや認知症の悪化といった精神的な面への影響を思うスタッフが多かったですね。






解説では、精神的弊害には『ご家族への精神的ダメージ』もあることを強調しました。

拘束されて身体的にも精神的にも衰弱する姿を見ることは辛いことです。

多くのご家族は、「うちのお母さんは認知症がひどいから仕方ない…」「施設の職員に迷惑をかけてしまうし…」と思われると思います。また施設に預けたことを後悔したり、預けた自信を責める気持ちになるかもしれません。そういったご家族の心理を理解することは重要なことです。





認知症による異常行動を抑制して良くなることは先ずありません。身体拘束をしないで工夫したケアを実践している施設、良質なケアを提供している施設があります。この辺りは逆に、明らかに病院より施設の方が対応力が高いと思います。

ご家族の皆様。施設での身体拘束は仕方ないということはありません。

いかにケアで対応できるかを考えるのが介護職の専門性と言えます。






問.身体拘束に該当する行為にはどんなことがあるか?



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これは各グループでたくさん意見が出ていましたね。

脱ぐことのできない鍵付きのつなぎ服、指の自由を奪うミトン手袋、車いすに身体を固定するY字ベルト、ベット柵で囲む・・・ 立ち上がりにくいソファーに座らせる、立ち上がる際の椅子を後ろに引けないようする、など巧妙な方法も・・・


 
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精神薬の過剰投与も身体拘束です。これもちゃんと意見にでました。

このように「身体拘束ゼロへの手引き」の11項目のすべてが意見として出されていました。





「座っててください」「ちょっと待ってください」と執拗に行動を制止することを言うスピーチロックも拘束では? また安全確保のためのセンサーマットも拘束にはならないか? と多くの意見があり、職員の意識の高さがうかがえました。



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平成16年に第1回の身体拘束廃止委員会が開催され、ベッド柵で囲む、自分で脱げない改良着の着用など身体拘束者21名があったという記録を資料に掲載していましたが、東キヨ主任から、自身が入職した10年前の黒潮園でも身体拘束を当たり前のようにしていたという実態が話されました。

今では考えられないがあ、当時、先輩も当たり前にしていたし、感覚的に悪いとか間違っているとは思うことがなかったと語り、その時代を知らない多くの職員がその話に耳を傾けていました。そして尊厳を守るケアを様々な視点から考える機会になりました。

新人さんは「今の黒潮園で働けて良かった…」とつぶやいていましたね。








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近年、特養では寝たきり防止運動の意識向上とともに、ベッドから離床して車いすで過ごして頂くことが多くなった現ことによる課題もあります。

身体拘束の要因で最も多くなっているのは、車いすからのずり落ち、立ち上がり転倒へのリスク回避です。その原因には身体に合っていない座位環境があり、適切な車いすやクッションの選択といったシーティングの知識が不可欠になります。



年内に「身体拘束廃止セミナー②」を企画しています。

当施設では、身体拘束を実施していませんが、そのような施設でもさらに意識を高めるとまだ課題はあります。






大切なことは… いいチーム、いい組織風土がそこにあるかです。

いいチームを創るのは一人ひとりのスタッフです。でもいい組織風土を創ること無くして、いいチームはできません。




みんなで考える「身体拘束廃止セミナー」

貴重な時間となりました。






by kuroshioen | 2018-09-13 12:42 | Comments(5)
Commented by pamumama at 2018-09-19 07:33
素晴らしい活動をされており、感謝します。
私は一家族ですが、10年前の特養の対応に反発して母を在宅にしています。
私自身も精神病院で看護師として働いた経験があり、身体拘束を当然のこととして行っていました。

今、県内の介護職養成学科で検討されている「不適切ケア防止の為の研究会」で色々学ばせてもらっています。
不適切ケアが一体何なのかから始まり、介護職の意識改革が中心となっています。

私は私自身の事として学びの大切さを実感しています。

このような活動をしておられることに感謝申し上げます。
Commented by なんJからきますた at 2018-10-09 11:57 x
職員に対するケアは?
Commented by 1 at 2018-10-10 04:12 x
勉強会の活気があっていいですね
しかし、なんでもかんでも拘束拘束虐待虐待とマスコミなどにも注目され世間でも騒がれる中、しまいには車椅子のブレーキをかけることでさえ拘束になりかねませんね
Commented by 介護施設に対する根本的な疑問 at 2018-10-11 04:02 x
そもそも施設に入れて社会から隔離してる時点で拘束だろうに
Commented by はなぶー at 2018-11-22 11:14 x
教えて下さい
夜間一睡もしない。危険行為犯す。
他に全介助の利用者いる。
夜勤一人で対応
どうすればいいですか