私たちは、
『おむつに依存しない排泄ケア』に取り組んでいます。
新入居の際には、ご家族に施設について説明させて頂くのですが、「施設に入居されている方で、おむつを常時必要としている方は何割くらいだと思いますか?」とお話すると…
「7,8割くらいでしょうか?」といった答えが返ってきます。
実際に、私たちの施設では日中におむつに排便をしないといけない状況にある方は1~2割程度で、多くの方はトイレでの排泄を支援させて頂いています。
では、なぜ高齢者の方はおむつを必要としているのでしょうか?
一つに足腰が弱ったなど、
トイレへ行くという移動能力低下の問題により、仕方なくおむつを付けるという事があると思います。
また、認知症の進行や様々な要因により、おトイレの感覚が鈍くなり、いつとなく出てしまうという事です。いわゆる
尿意や便意が失われているという問題ですね。
実際には、この2つの要因が何らか重なっていることが大半です。
特に在宅介護など、介護する人が常に関わることができない環境では、このような課題に直面し、やむを得ずおむつを使用することが多くあると思います。
そこで、
自分自身に置き換え想像してみてください。
歩くといった移動能力が衰え…
そして尿意や便意がはっきりしなくなっていく。
暮らしの充実どころか、生きていくことに自信を喪失するかもしれません。
おトイレが自分の力で出来なくなり、おむつを付けなければならないという事ほど辛いことはないでしょう。
そして、排泄に人の助けを要するようになる・・・
排泄の自立は尊厳ある暮らしにおいて、最後まで保たれるべきADLではないでしょうか? 例え
自立できなくなった時こそ、その人の尊厳に最大限に配慮されたケアが最も重要ではないでしょうか?ですから、私たちは
『おむつに依存しない排泄ケア』を大切にしたいと思っています。
先ほど、おむつを必要となる要因についてお話しましたが、トイレへの移動能力の課題に対しては、おトイレに行けないから
ベッド上の排泄ではなく、おトイレへお連れするという事です。
単純なことですがそれ相当の介護力が必要となり、限られたマンパワーの在宅ならともかく、意外と施設でも出来ていない所が多くあります。私たちは介護度4,5といった重度要介護者であってもトイレで座って頂く介護を行います。
次に尿意、便意の問題です。そこで私たちは全入居者の排泄の状況を細かく記録し、
そのデーターから、個々の排泄リズムを把握しています。特に排便に着目し、その人それぞれのリズムに合わせて、おトイレでの排便を支援していきます。
みなさんも「毎朝スッキリ!!」「2,3日に1回かな…」と排便の間隔は個々によって違いますよね。仮にご本人の便意がはっきりしなくても、この傾向がつかめれば私達の方からおトイレを支援し自立を促していきます。また便秘の方にはその原因をアセスメントし、改善を促します。
ここで便秘だからといって下剤を服用するとなると、薬の作用で強制的に排泄するため、本来のリズムが把握できない他、さらに便意を失うことになってしまいます。ここで
下剤の中止がおおきなポイントとなります。
実際に現場のアセスメントで使用する記録は1日の
「生活チェック表」と排便の失敗の方を1月単位でアセスメントする
「個別排泄記録表」です。
「生活チェック表」の排泄の記録欄。
排泄介助のタイミングと、排便の有無。ベンの性状を細かく記入。
「個別排泄記録」では1ヶ月の傾向を分析し、個々の排便リズムをアセスメント。
その際の便状から下剤の調整も行います。
そして最も大切な、週1回開催するスタッフカンファレンスの記録
この記録に基づき、個別の細かなケアの内容や目標をユニットのスタッフ間で共有し、1週間の支援を行います。これは目標が明確な課題解決型のケア体制の重要なポイントです。
こうやって毎週、29名のご入居者の課題やケア方針の検討を継続することは大変ですが、これがクレール高森のケアの質の大切な土台となっています。
このように、おむつ交換型の介護ではなく、自立を支援するケアを実践できることは、介護職の高い専門性とチームワークがあってのことです。
特別養護老人ホーム黒潮園では、平成27年3月に
「おむつゼロ特養」に認定されました。クレール高森では現在、どうしても排泄におむつを必要としている人は2,3名というところです。
現在、おトイレでの排泄自立に向けたリハビリ介護に取り組んでいるところです。病院や他施設ではおむつを使用していた方が、クレール高森ではおむつを必要とせず排泄が自立した生活に回復された方も多くおられます。
このような、最後まで尊厳ある暮らしを保って頂きたい。というケアへの想いの結果として、クレール高森でも今年度中に「おむつゼロ」が達成できれば… と取り組んでいるところです。
私たちには信頼し合えるチームがあります。
そして、それは必ず質の高いケアにつながるものと思います。