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クレール日記

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着物姿での介護

先日、地域の病院で勤務する知り合いの看護師さんから「ある話」をお聞きしました。



病気を患いご入院された一人暮らしの方のお話です。

治療期間も終え、そろそろ退院ということになったそうです。
体力が落ちており、一人暮らしを心配した看護師さんが声をかけたそうです。

「退院後はお一人で大丈夫ですか?」



「心配ないのよ。私は退院したら黒潮園で暮らすの!!」

「ショートステイを利用して、色々な施設を見てみたけど… 黒潮園が一番。」




「へぇ~ 黒潮園のどこがいいんですか?」




「黒潮園はねぇ… 職員さんも皆優しくて…そこにはとても温かい暮らしがあるのよ。」



「お正月には職員が着物を着てお仕事されてて感動したの。」

「黒潮園を利用し… 家に居る以上に本当にいいお正月を迎えることができたの。」 

「忘れられないわぁ。」



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2010年新年祝賀会:初めて着物にて
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ちょうど今年のお正月はどうしようかなぁ…って考えていた年末にこの話を聞きました。

小さなことでですが本当に嬉しかったですねぇ。





日本人は正月をとても大切にしてきました。1年の節目であるお正月は、旧年が無事に終わった事と新年を祝う行事として正月飾りをし、正月行事を行ったり正月料理を食べて盛大に祝う風習があります。

先日、東潔明介護職員から、この地域のお年寄りの方はサンマ寿司を食べてお正月を迎えるというお話がありましたが、お正月を始め四季折々の行事には私たちの文化が宿ります。


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私はご入居者にとっても、そして暮らしを提供する職員にとっても… お正月はとっても大切なものと捉えています。

住み慣れた家を離れて施設に入所されたとしても、これまでの暮らしが継続されることを、施設という固定概念や枠にはとらわれずに造り上げていきたい… という想いから法人のケア方針の一つに「豊な日々の暮らしの提供」をかかげています。

1年の始まりのこのお正月をどのように迎えることができるか… =私たちの掲げる豊な暮らしの提供が実行できているのかと言っても過言ではないと思うのです。





ということで、私が着任し初めて迎える2010年のお正月に、その想いをこめて職員が着物を着ることを提案させて頂きました。

実際には移乗介助やおトイレの介助など… 着物姿では身動きの取りにくいことには間違いありません。「こんなんでおむつ交換とか出来んわぁ。」現場スタッフもこれまでの働き方を考えると、少し抵抗感があったと思います。(当時は少しどころじゃなかったかな?)
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ある施設では職員から同じような提案があったものの…何かあった時の対応の遅れなどリスクの面から却下となったというお話も耳にしています。


何を大切にするか・・・ ですね。




冒頭にあったように、あるご利用者さまが地域で何気なくお話をされた・・・

「黒潮園はねぇ… 職員さんも皆優しくて…そこにはとても温かい暮らしがあるのよ。」

「お正月には職員が着物を着てお仕事されてて感動したの。」

「黒潮園を利用し…家に居る以上に本当にいいお正月を迎えることができたの。」 

「忘れられないわぁ。」


というお言葉にあるように、私たちの大切にしているものを感じていただけたことが全てであり… 
本当に嬉しかったですね。



ケアへの想いや取り組みは、その苦労と同等にはなかなか伝わらないものではないのですが・・・ このような地域の方からの自然なお声を耳にして初めて、間違いないと確信するとともに「やりがい」を感じる瞬間となります。

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着物のセットも少しづつ購入し、年々増やしていってます。
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毎年、着付けを担当するのは久保総括主任と長尾管理栄養士さん。
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もちろんこういったスタッフがいなければこの企画は実現しなかったでしょう。


今年は、この取り組みを知ったクレール高森ご入居者さんのご家族がご協力してくれました。
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着付けの仕事をされているというということで、大変勉強になりました。





また、お正月らしい行事やレクレーションの企画を充実して欲しい。ということで正月の三が日は入浴業務も見直しています。

お正月には遠方からのご家族の面会もあります。

入浴業務でバタバタしてご家族をお待たせする… ではなく、一緒にレクリエーションに参加して頂いたり、またゆくり過ごして頂いたり… そういったご家族とのつながりのあるお正月にしたいという想いからです。

その内容は後日、平根介護主任からレポートがあると思います。
(黒潮園の様子はブログ「特別養護老人ホーム黒潮園フロア通信」にて)
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お正月の飾り付けも職員が手作りで創意工夫
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鏡餅は暮れの餅つきでつくり… 飾りは東課長が生きた伊勢海老から準備



あれから5年… このように法人のケア方針の一つである「豊な日々の暮らしの提供」がみんなのものとして現場に浸透し、黒潮園らしさができてきたことは、私個人としても嬉しく思います。


今年も1年、施設という固定概念や枠にとらわれることなく、職員みんなで創意工夫し「クレール高森らしい暮らし」を創っていきたいと思います。
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近年、一般家庭では着物をきる習慣もなくなりつつあり、おせち料理に門松や鏡餅を飾るなど…今の世代の者には少しづつ縁が遠のいているように思います。

だから必要ではないのではなく、だからこそ大切なのではないかと思います。
by kuroshioen | 2015-01-05 16:47 | Comments(0)