クレール日記

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浴室設計⑥ 寸法の検証

これまでもご紹介してきたクレール高森の浴室設計ですが、より家庭的な入浴を考察し個浴槽の設置に決定したことをご紹介しました。

施設設計では利用されるお年寄りの方と、介助を行うスタッフ両側面から使い勝手を考え設計をすることが大切です。


今日は図面の寸法についてお話をしたいと思います。
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さて皆様ここで一つ考えて見てください。
足腰が弱くなり、お一人ではお風呂に入れなくなった自分を想定してみましょう。

お風呂に入るときに最も大変なことは浴槽をまたぐことだと思います。

その入浴方法ですが、バスボードや入浴台などの福祉用具を使用し、一度浴槽に腰掛けてから湯船につかるというのが最も一般的です。(家庭のお風呂で最も実用的な方法です)
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その際、重要となるのは床タイルから浴槽縁までの高さです。

車椅子で浴室に入れませんので、脱衣を済ますと専用のシャワーキャリーに移ってから移動します。
シャワーキャリーから浴槽縁への移乗・立ち座りに最も適した高さとする必要があります。

クレール高森の浴槽ではその高さを40cmとしています。
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ですから当然、浴槽を半埋込みとする必要がありますね。





次に体を洗う場面を想定してみましょう。

ご自分で手の届く範囲はご自身でなさるでしょう。
髪の毛を洗うのは難しいかもしれませんね。

さて、洗い終わった石鹸の泡をどうやって流しましょう?

そこで目の前にある洗面器置き台の高さをどうするのか議論になりました。
湯のはった桶を置くところです。

建築の教科書通りの一般的な高さでいいのか?
(洗い場椅子と同じ高さ±?cm)

そこでいつものように現場検証を行いました。
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これは使用するお風呂椅子の高さによって変わりますので、併設するデーサービスセンター悠久に行き、実際に使用しているシャワーキャリーで動作を確認してみました。

ご自身で桶を持って湯を肩から流したいと思えば、持ち上げやすいように洗面器置き台は高い方がいいでしょう。

でもそうすると、顔を洗う時には桶に両手を入れる動作がやりにくくなり、お湯をすくうことが難しくなります。
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肩から湯を流すことは、私たちがシャワーを使ってお助けできます。
でも、自分の顔を流すのはやはり出来るだけ自分の手でしたいですよね。
(他の人に顔に湯をかけていただくのはちょっと抵抗がりますよね…)

そこで自分で洗顔ができることを優先した寸法とし、洗面器置き台の高さはあえて必要以上に高くしないことにしました。一般家庭のお風呂では低い椅子を前提としていることが多くやや低いことから、今回は45cm前後が使いやすいかなと言うことになりました。


一方で、シャンプーやボディソープを置く台の高さは‥ 職員の作業性と腰への負担を考慮し、かがまなくてもいいように高い位置に設置することにしています。
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施設設計では高さ・寸法は命です。ここには非常にこだわって設計をしています。

浴室以上に検討の検討を重ねているのがトイレの設計です。以前、手すりの位置・寸法について一度まとめましたが、あれからさらに検証と考察を行い… 最終プランが先日決定しました。その内容は次の機会にご紹介したいと思います。
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by kuroshioen | 2014-01-31 16:57 | Comments(0)

第20回定例会議 週間実施工程確認


昨日、水曜日に第20回目となる定例会議を行いました。

週間工程確認では、南等を中心に内外装仕上げ作業の工程がぎっしりと組まれています。


南棟2階のサッシが納入されました。
工場より北棟サッシの納期回答があり、1階2/5、2階2/20 の予定となりました。
本格的な内装仕上げのためには、雨じまいのためのサッシ納入は大変重要なポイントですからね。
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えっ? 手で運ぶの?
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大きなサッシを採用しており、高さわずか数十センチで、トラックが敷地への通路をくぐれなかったそうです。



<現場視察>
【南棟】
現場に置かれている資材を見ると、その工程の進行がよく分かります。
(写真を見比べると間違い探しのようですね)
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先日までは、造作大工さんの作業場となっていた1階のリビングですが、その姿はなく…
間仕切り壁の仕上げのための石膏ボードや断熱材グラスウールが置かれています。
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1階では居室壁のボード張りが行われています。


そして2階にあがると…
作業台に木材やサンダーなどが運び込まれており、造作大工さんの活躍の場は1階から2階に移っていました。1階での仕事を終え次の作業に取り掛かっていたんですね。
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また到着したサッシが早速取り付けられています。




【北棟】
1階では天井の配線・配管が進んでおり、同時に居室の間仕切り壁の下地となるLGSが組み終わっています。
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北棟2階に上がると…
あっという間に先週の工程であった型枠の解体が終わっており、コンクリートの躯体だけの広い空間が現れました。さぁこれからって感じですね。
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早速、天井への配線配管の準備に取り掛かっています。





【共用棟】

1階では型枠解体の真っ最中です。そこで入口正面の壁面が姿を現しました。
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ここは鈴木設計士こだわりの『杉板型枠のコンクリート打ち放し』の壁です。
「施設にコンクリート打ち放し???」
ロビーに入って初めて視界に入る重要な壁面としてどう仕上げるか…設計の段階でかなり議論しました。
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コンクリートに杉板の独特の木目と質感が映し出されています。
コンクリート補修後がとても楽しみです。
(筆を使って杉板の木目や節の模様まで補修する専門の職人さんが存在するそうです)



27日(月)にコンクリート打設を行った2階部分ですが、設置された階段を上がると…
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エレベータを吊り下げるモーターを収納されるボックスなど、屋上階の配筋作業が行われていました。残す最後の躯体工事です。 


鈴木設計士
「高い所と海の好きな理事長のためにも…ここはちょっとした展望スペースとしました。」

と言うことです。



工事が加速しており、各棟で次々と展開される仕上げ作業に… 週間実施工程をお伝えするのも大変です。こうやって南棟・北棟・共用棟と順番に見てみると、仕上げ作業の工程がなんとなく見えてきませんか?
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by kuroshioen | 2014-01-30 22:11 | Comments(0)

断熱材

最も内部仕上げ作業の工程が進行している南棟1階ですが‥
先日紹介した浴室の壁がピンク色に???
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そしてサッシ廻りもピンク色になっています。
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これは断熱材である発泡ウレタンが吹き付けられたものです。




【省エネと断熱材】
この断熱材は外気温の影響を和らげ、屋内の温度を一定に保つ部材です。
近年、「省エネ」とう言葉をよく耳にしますが、住まいにおいても、冬暖かく夏涼しい高気密・高断熱の設計が一般的となっています。

この断熱材を外壁や屋根、床に施工することで、冬は外の寒さを室内に伝わりにくくすると同時に、室内の暖かさを外に逃さないようにします。
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断熱性能は冷暖房のエネルギー効率など、建物の機能を左右する重要なポイントとなります。断熱材の他に、窓ガラスに熱の伝えにくいペアガラス(2層ガラス)の使用や、枠の冷えを緩和して結露を防ぐ木製サッシ枠を用いることも効果的です。




【断熱と壁内結露対策】
もう一つ断熱材の重要な役割として結露対策があります。
結露とは冬に暖房した部屋の窓などにできる水滴のことですよね。
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水蒸気など外部に放出しにくい高気密の家では壁の内側に結露が生じる「壁内結露」が問題ともなります。窓ガラスにできた結露は簡単に拭き取ることが出来ますが、壁の内側では拭き取るわけにもいきませんし、それどころかその発生を知ることすらできません。

こうした「壁内結露」は、気づかないうちに基礎構造や柱など躯体を腐らせる原因にもなる他、ダニやカビの発生を助長する要因ともなり、その対策の一つとして断熱は非常に重要となります。

実はコンクリートの躯体とアルミサッシの間の取り合いに木枠を造り込むことは、インテリアとしてだけでなく、熱伝導率の低い木により、断熱・結露防止においても意味があるということです。
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さらに周りに発泡ウレタンを吹いて機密性と断熱性を高めているんですね。

東京で活躍する益田一級建築士設計事務所は、寒冷な気候である東北地方の物件の設計も経験があります。その経験からこの比較的温暖な紀南地方におけるクレール高森の設計であっても、断熱に関しては細部までしっかりと設計されているということです。




【現場発泡ウレタン断熱材】
先日施工された現場発泡ウレタン断熱材は石油から生成された2種類の主原料を混合・反応させ形成されます。

専用の機械を積んだトラックが現場に横付けされ、吹き付けホースを伸ばしエアーガンで職人さんが施工面に原液を吹き付けていました。すると液体が発砲し泡がどんどん膨らみ断熱材が形成されるというものです。
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この泡は70~100倍に膨れ数秒で硬化します。(硬化すると軽く踏んでもつぶれません)
泡が固まる様子は間近で見ると面白いですよ。



【断熱材の種類と施工】
断熱材には材料や熱伝導率などから色々な種類があります。施工コストも考慮しそれぞれの場所に適切な材料が用いられています。(勉強はしましたが、建築専門のブログではないので説明は割愛させて頂きますね)

発泡ウレタン断熱材はその自己接着性により、隙間ができにくく安定した断熱効果が得られるほか、現場施工のため資材搬入などなく、工期の短縮、コスト削減にもなります。

地階地域交流室のボードタイプの断熱材スタイロフォーム
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間仕切り壁の中にある断熱性と吸音性の高いグラスウール
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特にコンクリートは熱伝導率(熱の伝わりやすさ)が木よりも大きいため、何となく住まいとしては冷たさを感じる建物になりがちですが、断熱の丁寧な設計はより暖かさを感じる空間づくりにもつながることでしょう。
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by kuroshioen | 2014-01-28 17:51 | Comments(0)

共用棟2階コンクリート打設


こんにちは。

紀南地方は穏やかな晴天の一日となっています。

朝から予定通り、北棟2階部分のコンクリート打設が行われています。

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生コン車27台分のコンクリートが打たれます。
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南棟から工事が進められ、初めて南棟の基礎コンクリート打設を行ったのは…
夏の強い日差しのさす昨年8月19日でした。

色々とありながらも… あっという間に半年が過ぎました。
あと残す躯体工事は共用棟屋上部の一部のみとなります。
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by kuroshioen | 2014-01-27 13:14 | Comments(0)

配筋・型枠建て込み終える

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週明けの27日(月)には共用棟2階部分のコンクリート打設が予定されています。
これに向け、現場では型枠建て込みと配筋が急ピッチで進められてきました。

本日の作業でほぼ目処がつきました。
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左端に南棟の屋根が見えています。ここまで建ち上がりました。




現場でいつもの型枠大工さと顔を合わせました。

「工期が大変な中、いつも有難うございまーす!」

大工さん「何とか間に合わせたでー!」

「ぎりぎりで安心はできへんけど、助かりましたわー。」

大工さん「後は内装を徹夜でやるしかないなー。」
「ええもん建つさかいに、わしらも予約しとかなあかんわ(笑)期待してるでー!」

「あともう一息、お願いしますよー!!」




活躍しくれている型枠大工さんは、コンクリートを打ち終わると役割を終え、完成を見ることなく次の現場に行きます。残す工程はもう少しです。

出会いがあり‥ そして去って行きます。

この建築を通じて職人さんのプロ意識を肌で感じることができ‥
とてもいい経験をさせて頂いています。
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by kuroshioen | 2014-01-25 23:48 | Comments(0)

第19回定例会議 週間工程確認

昨日の定例会議の報告をします。

工事の進行はそれぞれ、躯体のコンクリート打設を行った順に南棟、北棟、そしてまだ打ち終えていない共用棟の順に追いかけるように進んでいます。
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<現場視察>
【南棟】
いち早く躯体が完成した南棟では先行して内部仕上げ工事が進んでいます。
浴室設計でお話をした南棟1階浴室の防水作業が終わり、何もなかったコンクリートの部屋が、浴槽設置の型枠などにより、何となく浴室に見えてきました。
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各部屋の壁の下地となるLGSが組み終わっています。壁を仕上げるための石膏ボードが搬入されており、いよいよボード張りが開始されます。
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【北棟】
1階部分は型枠の解体を終え、即、設備関係の配線・配管工事が進められています。
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年末にコンクリート打設を終えた2階部分では、現在、型枠の解体が行われています。
解体が終わればコンクリート補修作業が行われます。
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モルタルで補修された外壁は、コンクリートとは違った表情で趣があります。
(左右の写真で見比べると違いますよね)
このままモルタル仕上げとしても建物に独特の雰囲気がありますね。次は下地処理を行い塗装です。

鈴木設計士は左官職人さんの腕の素晴らしさに大変感動していました。「数々の現場を手掛けてきた中でダントツの仕上がり!」と絶賛されていました。





【共用棟】
27日に予定するコンクリート打設に向け、2階部分の配筋・型枠建て込みが順調に進められています。見下ろしていた共用棟建物の高さが増し、撮影する南棟屋根近くまで建ち上がってきました。
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一方、すでに躯体が完成している地階の地域交流室では、断熱材を張る作業が終わり、これから内装仕上げが始まります。

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この地域交流室は慰問などのイベントや、会議、研修‥ 様々な用途に使うことが出来ます。
今は窓の前には土が盛られていますが、黒潮園2階からスロープでつながる庭に面しており、クレール高森だけではなく黒潮園のご利用者さまも活用できるよう設計しています。

黒潮園とクレール高森、両方の施設の方が集まることのできるスペース。完成後の活用が楽しみです。
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by kuroshioen | 2014-01-22 19:13 | Comments(0)

想いをカタチに‥

介護主任の平根です。

ユニットケアのリーダー研修に参加後、「黒潮園でも何かできることはないか?」と考え‥「想いをカタチにしたい」の第1弾として、少しでも落ち着く居場所を提供したいとソファーを置きました。
これにより午後のお昼寝タイムに気持ちよく眠られる方や、ゆったりとくつろぐ認知症の方がみえられるなど、入所者さまの生活に変化が見られています。
 

そこでもう1個ソファーを購入。(近くのリサイクルショップで4,000円!!)
また、少しでも家庭的な雰囲気が欲しかったので、床にフロアーマットを敷きました。ある利用者さんが「靴脱がんでええんか?」と言われていました。暮らしの環境が変わることでご利用者さまの行動も変わることを改めて感じさせられました。
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ここでくつろいでお昼寝している利用者さんの姿を見ると「やって良かった」と思い、職員としては嬉しくてニヤニヤしています。



そして「想いをカタチにしたい」第2弾は、朝、寝ている人を無理やり起すのではなく、普通の生活のようになるべく好きな時間に起きて、ゆっくりと朝食の時間を過ごして頂くことができないか?

そこで!!

フロアーで食事提供を管理しやすいパンの提供で試みることにしました。
(通常の献立では定時に提供し、下膳する必要があるため)

「焼きたてのパン食べたいわ!」と希望のあるTさん。また、毎朝ゆっくり起きて来られるMさん。希望のあるお二人に試みとして、朝はゆっくり起きてもらい、焼きたてのパンを食べてもらおうと企画しました。
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オーブントースターで焼いた食パンにお好みのバターとジャムをつけて食べて頂きました。パンが焼けた時の香りは本当に美味しそうで、朝食を食べて出勤した私もまた食欲が湧いてきました。そしてコーヒーカップに自分でコーヒーの粉と砂糖を入れられ、食後の一服をされていました。

その風景はまさに普通の家庭の朝食の感じです。
(トースターは私の家で使っていたものです。)

ユニット施設だけでなく、従来型特養でもこんな暮らしって理想ですね。

その人らしい暮らしの提供。まだまだ手探りですが出来ることから少しづつ取り組んでいきたいと思います。
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by kuroshioen | 2014-01-20 23:05 | Comments(0)

浴室設計⑤ 要介護度の想定と設計

浴室設計④では、各社から発売されている施設向けの個浴槽についてお話をしました。
その選択には大変悩みました。浴槽の選択は施設のケアの在り方を大きく左右するといっても過言ではありません。


【ユニットケアの理念と要介護度】

先ず考えないといけないことは、生活される方の要介護度をどう考えるかです。
行政の定める特養入所指針に基づくと、要介護度4~5の方が優先的に入所ということになります。そうなると、個浴ではなく特殊機械浴槽が最も適するのかもしれません。

ユニットケアの理念は『一人一人の生活習慣や好みを尊重し今までの暮らしの継続が継続できるようサポートすること』とされています。
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逆に言えば、これまでの生活習慣や好みなどしっかりと持たれており、これまで何とか自立してきた居宅での暮らしを、仮に施設に入居(住み替え)したとしても変わることなく継続して過ごしたいというニーズに応えるという事だと思います。

この様なニーズをお持ちのお年寄りの方を想像してみてください。
頭の中に浮かんでくるのは、どちらかと言えば比較的軽度の方ではないでしょうか?

実際に新宮市で施設入所を申し込まれている方は、要介護度4~5以外の方のほうが圧倒的に多いのです。現在の入所指針ではこれらの方々には入所の機会が極めて少ないと言えます。
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そこで黒潮園の中期事業計画に『地域を支える福祉システムの構築』を掲げ、今後なお一層問題となってくる老夫婦世帯や独居高齢者世帯の増加に対して、個室でプライバシーが保たれ個々の生活が継続できるユニットケア施設『クレール高森』を計画したのです。

すべてのニーズを満たす施設ケアというのは大変無理があります。浴室設計においても、重度介護者まで想定すると、確かに「備えあれば患いなし」というように特殊機械浴槽があれば問題ないでしょう。しかし、居宅で個浴槽での入浴を楽しまれてきた方にとっては、本当に望まれる生活と言えるでしょうか?とても違和感を感じられることでしょう。



【浴槽の選択】

私はユニットケアの理念から、基本的にはユニットケア施設が重度な要介護者のニーズに対応するもとは思っていません。

そこでクレール高森では中等度(要介護度3)の要介護者のADL(日常生活動作)、身体能力を想定した設計をしています。私たちの強みは既存の従来型特養黒潮園が隣接していることです。それぞれの施設体制の強みをもって相互支援ができ、完全な寝たきりの状態となられても特殊機械浴槽の設置された黒潮園でケアを行うことができるのです。


ユニットケアでの入浴は基本、お一人づつ、一人のスタッフが介助するマンツーマンケアとなります。ですからご利用者さまの負担だけではなく、介護職員も安全に介助できるかがポイントとなってきます。
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そういった点から前回紹介した酒井医療のパンジー、OG技研のボランテともに要介護度3前後の車いす移動が中心となる高齢者には大変使いやすい浴槽です。

浴槽をまたぐ動作を不要とすることで、車いすとベッドの移乗介助と同じような介助で、浴槽に移乗するだけで湯船につかることが出来ます。これは特別な介護技術を必要としないため、経験の少ない介護職員でも安心して、マンツーマン介助が出来るでしょう。またこの機能は浴室の床を掘り下げる必要がなく施工も容易とします。



ここでもう一つ、クレール高森の設計で大切にしている点は「暮らしの継続」です。これまでのクレール日記につづってきましたが、「施設」ではなく「住まい」という視点からの設計です。
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酒井医療のパンジーは「入浴装置らしくない普通のお風呂をつくろう」と当時、前代未聞のテーマにその実現に向け検討を重ね開発されたものです。

しかし、この画期的なパンジーもボランテも、クレール高森の「住まいの設計」という設えの中では、どうして入浴装置らしく見えてしまいます。そこだけが唯一の難点でした。

職員からは「出来るだけ家庭的なお風呂に入っていただきたい」という声が多くあります。東京の施設でユニットケアに携わった経験のある職員(度々登場する東介護職員)も「特殊な浴槽でなくても個浴への入浴介助はできる」という意見でした。
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そこで最終的には、より家庭的なお風呂に近いデザインでありながら、様々な介護への工夫がされたメトスの個粋を選択を決断しました。
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個粋はボックスに介助用リフトが収納されています。一見するとその存在が気づかないデザインが魅力的です。また浴槽とリフト収納ボックスは別々の構造となっているため、浴槽だけを設置しておいて、将来必要となれば簡単な工事でリフトを追加設置することが出来ます。このように入居者の状況に合わせた幅広い将来対応が可能となります。

実際に2回ほど、施設に実物を持ってきてもらい使い勝手の検証もしました。
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【重度化対応への工夫】
ほとんどのケースでスタッフの介護技術で個浴槽への入浴介助ができると言われていますが、やはり万全とは言えません。そこで4つのユニットのうち、個粋シリーズのリフト付き浴槽を1つのユニットに設置し、他3ユニットを個浴槽のみの設置としました。

個浴槽のみの3ユニットともに、排水や床の構造は将来的にリフトを追加設置できるよう設計しています。

この浴室設計の最大の特徴は、完成時にリフト付き浴槽を設置する南棟浴室の設計です。
他のユニットの入居者さまが、どうしても個浴槽での入浴が難しいという場合に、この南棟1階リフト付き浴槽を活用できるよう工夫したのです。
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エレベーターに近いところに浴室を設け、ユニット玄関ではなく壁面を開閉可能な構造とした裏導線から浴室に入ることが出来るよう設計しました。

また、他のユニットの浴室より広く設計されています。これは車いすではなくストレッチャーでの入浴介助に必要な寸法を計算しているのです。また数十年後の状況など極度の重度化も想定し、最終的にこのリフト付き浴槽を撤去し、特殊寝台浴槽を設置できるかも計算して設計います。


今回は個浴槽の選択についてお話しました。このように浴室の設計は入居者さまの介護度や望まれる生活スタイル、そして介護方法や職員の作業性などあらゆる面から焦点をしぼっていく必要があり大変悩ましいものです。次回、浴室設計⑥では具体的なレイアウトや寸法の検証についてお話をしたいと思います。 
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by kuroshioen | 2014-01-18 22:50 | Comments(0)

現場事務所への訪問者

この後ろ姿は‥

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ユニットリーダー研修へ参加した東潔明介護職員です。
(確か仕事休みの日では‥???)



以前、このクレール日記でユニットリーダ研修の実地研修における「履物」についての気づきを報告しました。

そこで、施設の床材について鈴木設計士により詳しく教えて頂きたいと現場事務所を訪れました。
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なぜ既存の施設では、コンクリートに塩ビシート張りが多いのか?

二重床工法とはどのようなものか?

施工価格は?

メリットとデメリット‥ 

転倒骨折を防ぐ衝撃吸収能力について‥

次々と疑問を投げかけていました。


鈴木設計士さん。作業の手を止めて、わかりやすく丁寧に解説頂きありがとうございます。
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最後に床材と建材カタログを借り、持ち帰っていました。
どうやら、施設内伝達勉強会に向けた準備を行っているようです。




クレール日記では建築についての考えを主に紹介しています。ここで新しく取り組むユニットケアを実践するためには、ケアに適する建物といったハード面が整っていなければ始まりません。ですから居住性とケアの在り方から細部までこだわり設計をしているのです。

しかし最も大切なことはソフト面です。ケアを支える人材が全てと言えます。働きやすい職場があってこそ、いきいきとした人材に恵まれ、そして質の高いケアが提供できるものと考えます。

社会福祉法人黒潮園では働きやすい職場づくりの取り組みの一つとして、このユニットケア研修だけでなく、個人がスキルアップのために希望する研修会も含め年間相当数の外部研修に、交通費から参加費まで全て法人負担し出張を支援しています。

施設の運営基準では2名のユニットケアリーダー研修修了者が必要ですが、今年度3名終了し、2名が受講中です。次年度も4名の受講支援を考えています

この学びが大きな力となり、クール高森のケアに反映されていくものと思います。
(東介護職員の伝達発表が楽しみです)
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by kuroshioen | 2014-01-16 12:12 | Comments(0)

トップライトorハイサイドライト

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昨日、工程報告のなかで南棟の特徴的な屋根の形状と、エアコン設備と採光窓についてお話をしました。

そこでこの採光窓はトップライトなのかハイサイドライトなのか‥ 
何気ない疑問が浮かんだので少し紹介したいと思います。



どちらも高い位置に設けた採光、または通風のための窓のことを言います。

「南棟の窓はトップライト?ハイサイドライト?どっちなんでしょうか?」

鈴木設計士「一般的に屋根面に水平に近い形で設けられるのがトップライトで、壁の上部に垂直に設けられるのがハイサイドライトといいますけど‥」

現場監督さん「私は用語は苦手です‥(笑)。」

鈴木設計士「クレール高森の場合は屋根の一部に取り付けられてますが垂直方向だから‥ トップライトではなくハイサイドライトでしょうか。」

居住空間に差す自然の光によるコントラストは気持ちを安らげますよね。
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クレール高森は海の青と森の緑に囲まれた素晴らしいロケーションを取り込むことに加え、自然の日差しによる暖かい空間づくりにこだわっています。
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紀南地方は海を照らす日差しが四季折々の風景を作り出します。
また冬でも日当たりのいいところは暖く感じられるほど、太陽の恩恵を肌で感じることができます。
一方で、台風がやってくると、その様子は一転し、想像以上の海から吹き上げてくる猛烈な風と雨にさらされます。

このようなデザインと景色の取り込みに工夫した大きなサッシやハイサイドライトを設計するにあたり、風雨対策など、この紀南地方特有の気象条件に十分に配慮することを念押ししていることは言うまでもありません。

建築はデザイン、居住性・使いやすさ、そして機能性を高い次元で満たすことが重要です。




床から天井まで切り取られた開口の大きな居室窓
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車椅子のフットレストの高さにより設計されたキックガード
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by kuroshioen | 2014-01-15 14:49 | Comments(0)