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クレール日記

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浴室設計① 施設の入浴と個浴

施設ではどうしても、自宅の暮らしとはかけ離れていることが多々あります。

その一つに入浴場面があります。一度に大勢の方を入浴介助するためには、複数の職員が配置され、大衆浴場のような浴室でそれぞれ脱衣、洗身、着衣と業務を分担し、流れ作業的に進められえます。

黒潮園では「施設だから仕方ない」ではなく、ご利用者本位の『ゆとりある介護を目指そう』ということで、介護職員を大幅に増員し業務の見直しに取り組んできました。そこでお一人お一人に合わせた『個別のケア』と『自立支援のケア』に取り組み多くの成果が見られています。

しかし、この入浴に関してはほとんど成果が出ませんでした。
その理由と施設ケアの課題についてお話をしたいと思います。

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【従来型施設の入浴】

皆さん、施設の暮らしではお風呂に週何回入れると思いますか?

施設における入浴回数については、省令である指定介護老人福祉施設(特養)の人員、設備及び運営に関する基準にて、従来型特養では『週2回以上の入浴または清拭』と定められています。

これは少ないと思いませんか?

現在、黒潮園では100名のご入所者が暮らされています。
100人の方を1度に入浴することは不可能であり、1日に約30数名の方の入浴介助を行います。すると入所者全員がお風呂に入るのに3日かかる計算となります。このことから省令で定められている入浴回数は、1人につき週2回となることがわかりますよね。

ですから既存型施設での入浴は、週2回というのが一般的となるのです。



では次に、お一人の入浴時間について考えてみましょう。

黒潮園の業務では入浴時間は以下のようになります。
AM9:30~11:00   90分
PM13:30~15:30 120分    1日の入浴時間計210分
210分÷30人=7分/人

お一人あたりの入浴時間は約7分という計算になります。

これが従来型施設ケアの現状なのです。想像して頂ければわかると思いますが、この限られた時間で円滑に安全に入浴をして頂こうと考えるとどうしても作業分担的とならざるを得ません。ですから、何とかしたいと思っても既存のケアでは、ゆったりとお風呂に入って頂くということは難しいのです。




【ユニットケアにおける個浴】

これまでも新しく取り組むユニットケアについて紹介してきましたが、クレール高森では小さなケア単位(1ユニット10名)で暮らしを支援します。

この入浴を考えるとよく解ります。


まだ業務内容は決定していませんが、仮に先ほどの計算と同じ1日210分の入浴時間を設けたとすると、1人の入浴時間は約20分となり、ゆっくりと入浴して頂くことができるようになります。

これはとても大きな意味を持ちます。

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設計では各ユニットに浴室を設けています。それぞれ4箇所のお風呂があります。
そして家庭のお風呂のように個浴槽を設置します。

入浴の流れも全く異なります。 一人の介護職員がお部屋からお風呂に案内させて
頂き、脱衣から入浴までマンツーマンで介助することとなります。

このように個別対応が可能となるため、ご希望があれば女性には女性職員が支援する同性介護にも対応したいと考えています。また職員から「夕方のお風呂もできれば」という声も上がっています。

このようにユニットケアでは、これまでの施設ケアのあり方を大きく変えることができます(その可能性があります)。 週2回だとしても『ゆっくりとお風呂に入ることのできる暮らし』っていいですよね。




【個浴の課題】

ユニットケアにおける入浴についてお話をしました。
そこでどのような入浴の様子を思い浮かべますか?

そのシーンは、お年寄りの方がスタッフの力添えで湯船に入り、スタッフと会話をしながら笑顔でお湯につかっている様子ではないでしょうか?

現在、行政は要介護4・5の方の優先的な入所を進めていますが、寝たきりで重度な方の施設入所のニーズを考えると、個室ユニットケアに若干の疑問が生まれてきます。入浴においても、重度要介護者をマンツーマンで家庭のお風呂のような個浴槽に入浴を介助することは、安全面からも高い介護技術を要します。

既存の特養ではその方に必要とする介護レベルに合わせて、寝たまま入浴できる臥位式機械浴槽を使用します。これにより、重度要介護者が安全にゆったりとお湯に浸かることができるのです。医学的な管理の必要性も高く、病院の様と言われる既存の多床室ケアが適する場面もあるように思います。
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個浴が最も素晴らしい入浴方法とは思っていません。大切なことはその人その人に合わせたケアだと思います。どのようなニーズを想定しているのか、目指すケアのあり方、その施設の役割・機能を明確にし、それに合った設計をする事が重要です。

クレール高森は、ADL(日常生活動作)の自立と暮らしの継続をニーズとした方のレベルを想定した設計を行っています。 (介護度3~4といった感じでしょうか?)



今回の浴室の設計で最も考察したのは、ご入所者の身体レベル(要介護度)と適する浴槽の選択です。

家庭と同じような浴槽がいいか?
リフト付き浴槽がいいのか?
将来の重度化に備えて機械浴槽が必要か?

入浴のあり方をどのように考え設計を進めたのか、詳細を浴室設計②で述べたいと思います。

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by kuroshioen | 2013-12-12 08:35 | Comments(1)
Commented by みんみん at 2018-09-21 18:28 x
私も要介護5の母をなんとかお風呂に入れてあげたいと思いますが、家で入れるには設備などの設置のスペース確保などいろいろと大変です。家のお風呂にゆっくりとつかってくれたらといつも思っています。ゆっくりと入れてあげたいけれど入れられない・・・もどかしいばかりです